クラウドはハードを消すものではない
クラウドを使うと、物理サーバーを買わなくてもシステムを動かせます。データセンター、ラック、電源、空調を自社で管理しなくても、サーバーやストレージを利用できます。
そのため、クラウドはハードウェアを知らなくてもよい仕組みだと思われることがあります。しかし実際には逆です。
クラウドはハードを消したのではありません。ハードを直接触らずに選ぶ仕組みに変えたものです。
インスタンス、ストレージ、ネットワーク、リージョンといった選択肢の裏側には、必ず物理的な制約があります。
インスタンス選びはハード選びである
クラウドでサーバーを立てるとき、最初に選ぶのはインスタンスです。CPUが強いもの、メモリが多いもの、GPUを使えるもの、ストレージ性能に寄ったものなどがあります。
これは、物理サーバー時代のどんなマシンを選ぶかという判断と本質的には同じです。
処理がCPUで詰まっているのか、メモリ不足なのか、ストレージI/Oなのか、ネットワークなのか。そこを見誤ると、クラウドでも普通に遅くなります。
クラウドは後からサイズを変えられます。ただし、何を変えるべきかを判断するには、ハードウェア資源の理解が必要です。
ストレージを知らないとDBも遅くなる
クラウドで見落とされやすいのがストレージです。アプリケーションが遅い、データベースが重い、バッチ処理が終わらない原因が、CPUではなくストレージ性能にあることは珍しくありません。
データベースはメモリだけで動いているわけではありません。読み書き、ログ、インデックス、バックアップ、スナップショットはストレージに関係します。
クラウドではストレージも画面から選べます。しかし、選択肢が簡単に見えるだけで、性能や特性まで簡単になるわけではありません。
ネットワークは見えないボトルネックになる
クラウドでは、ネットワークも重要です。同じクラウド内のサービスでも、リージョン、可用性ゾーン、VPC、ロードバランサー、DNSの設計によって、遅延、可用性、コストが変わります。
アプリケーションとデータベースが離れていれば遅延が増えます。大量のデータをリージョン間で動かせば、時間も費用もかかります。
クラウドではネットワーク機器が見えにくくなります。しかし通信は消えていません。むしろサービス同士がネットワーク越しにつながる分、設計の重要性は上がっています。
コストはリソースの使い方で決まる
クラウドの費用は、CPU、メモリ、ストレージ、ネットワークをどう使うかで変わります。
大きすぎるインスタンスを選ぶ、不要なストレージを残す、ログを無制限に保存する、データ転送量を考えずに構成する。こうした使い方をすると、費用は簡単に膨らみます。
クラウドコスト管理は、請求書を見るだけでは不十分です。どのハードウェア資源を、どれだけ使っているのかを見る必要があります。
まとめ
クラウドは、ハードウェアを買わなくても使える仕組みです。しかし、ハードウェアの知識が不要になるわけではありません。
インスタンス選びはCPUやメモリの判断であり、ストレージ設計はDB性能に関わり、ネットワーク設計は遅延やコストに影響します。
クラウドはハードを消したのではなく、ハードを抽象化しました。だからこそ、その裏にあるCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークを理解する必要があります。
クラウド時代に必要なのは、サーバーを物理的に組み立てる知識ではありません。ハードウェア資源が、性能、コスト、安定性、障害対応にどう影響するかを判断する知識です。
